ハンニバルにとって6歳のときに起きた3つの出来事は忘れられないものであった。
その中でも妹ミーシャの誕生は、彼にとって初めて愛すべき存在、守るべき命というものを自覚させたのである。
かけがえのない存在
ハンニバルにとって妹ミーシャの存在は特別なものとなってしまう。
1945年の冬、狩猟ロッジでの避難生活はソ連軍の進駐とドイツ軍の攻撃に巻き込まれてしまったのである。
この戦いで一瞬のうちにミーシャ以外の家族すべてをハンニバルは失ってしまい、ミーシャを保護するのは自分一人となってしまったからである。
さらに、略奪者のヴラディス・グルータス一味に狩猟ロッジは占拠され、二人とも囚われの身になり、それまでの牧歌的生活から地獄の生活に一変してしまう。
そのような中でリトアニアの冬は容赦なくグルータス一味とハンニバル、ミーシャを追い詰めていき、食料に窮したグルータス一味はついに妹ミーシャを手にかけてしまう。
このときの様子をハンニバルは詳細に記憶に留めているのであるが、あまりに悲惨な記憶であるために深く心に傷を負い、その記憶は悪夢としてのみ再生されることとなり、その後のハンニバルの成長に重大な影響を与えていくのである。