ハンニバルは狩猟ロッジでの妹ミーシャ殺害で強い精神的ショックを受け、いつしかその復讐をすることを心に決めたようである。
家庭教師のヤコフ先生に「記憶の宮殿」と呼ばれる記憶法を学んでいたハンニバルは、ミーシャを殺害した者達の顔はしっかりと記憶しているが、精神的ショックからそのほかの記憶を掘り起こせないでいた。
しかし終戦後パリで医学生であったころにハンニバルは、偶然に解剖用の献体となる死刑囚に最後の尋問をするポピール警視が使う記憶を呼び戻す薬物の存在を知り、それを用いて復讐のために必要な情報が狩猟ロッジに残されてることを思い出し、故郷リトアニアに入国することを決意する。
戦後も裏社会でかつての仲間と繋がっていたドートリッヒ
妹ミーシャ殺害の一味であったエンリカス・ドートリッヒは第二次大戦終了後国境警備隊の中尉になっていたが、その職務中に自分が関わった略奪と殺戮の目撃者であるレクター家の生き残りハンニバル・レクターがフランスからリトアニアに入国するのを知るのである。
ドートリッヒはかつての仲間ヴラディス・グルータスたちとその後も裏社会で通じており、ハンニバルがリトアニアに入国することを知らせ、自分たちの行った行為の目撃者で唯一の生き残りであるハンニバルを抹殺しようとする。
しかし、ハンニバルはすでに薬物の力を借りて封印してあった記憶にたどり着いており、どこに行けば手がかりを得られるかはっきりと思い出していた。
今回の入国もその記憶を元に、復讐のためのさらなる個人を特定できる手がかりを探すことが目的であった。
ほどなくハンニバルはレクター家の狩猟ロッジで襲撃者の一味で略奪品の管理をしていたカツィス・ポーヴィック(鍋男)の遺体から仲間の認識票を発見し、復讐すべき者の名前を知る。残りの情報は各人の居場所だ。
ハンニバルにとっては、認識票を発見した直後に自分を尾行していたドートリッヒを捕らえることができたのは幸運であった。
ロッジで発見した認識票と記憶に残っていた顔とくっついた指の特徴から、自分が捕らえた人物の身分証明書からその男が一味のエンリカス・ドートリッヒと確認できたことのみならず、ドートリッヒを処刑する前に襲撃者の内のプロニス・グレンツとペトラス・コルナスの居場所を聞き出すことができたからだ。