ペトラス・コルナスはフランスでクリストフ・クレベールと名乗り、パリ郊外のフォンテンブロー近くでレストランを経営していた。
表の顔は美食家にしてカフェのオーナーであり、毎週日曜日に協会へ祈りに行く二児の父でもあった。
しかし、紫夫人と入ったそのカフェでハンニバルは、コルナスの娘カテリーナが妹ミーシャの腕輪を着けていたのを見逃さなかった。
妹ミーシャとの約束
ペトラス・コルナスのカフェにわざわざ紫夫人が同行したのは何とかハンニバルを闇の世界から引き戻すためであった。紫夫人はポピール警視から彼自身も追っている第二次大戦時の戦犯を、ハンニバルが私刑に処している事を知らされていたのである。
紫夫人はその夜の夕食時にハンニバルに、これ以上殺人を犯さず、日本へ渡り医者になるよう懇願したが、ハンニバルの心はすでに半ば闇に引き込まれていた。
彼は「ミーシャに約束しているから」と言った後、紫夫人の部屋を後にしたのである。
ついにグルータスの居所を突き止める
ついにコルナスを処刑する時が来たが、ハンニバルはコルナスからなんとしても聞き出さねばならないことがあった。
それはグルータスの居場所であった。
そのためにハンニバルはカフェに居るコルナスを処刑する前にコルナスの自宅に忍び寄り、娘のカテリーナが着けていた腕輪を持ち出した。
コルナスと対峙した時に腕輪とロースト・ビーフを使ってカテリーナの成れの果てを想像させ、グルータスの居場所を聞き出した。ハンニバルには時間がなかったのである。そのとき、紫夫人がグルータスの手下により拉致されていたからだ。
その後、ペトラス・コルナスは政宗の短刀で顎から頭蓋骨を貫かれ、家族を残しこの世から消えた。