グルータス一味は何とか狩猟ロッジに隠れ潜むことは出来たが、食料が不足していた。
何度か森に猟に出て行くが、冬の季節でそう簡単に食料を確保できるわけはなかった。
飢えとインフルエンザにより如何ともしがたくなったとき、ついにグルータスは、それまで衛生兵として偽装するために一緒に連れてきた少年を食料にしてしまった。
しかし、食糧不足はその後も続き、ついにグルータスはハンニバルの妹ミーシャを手にかけてしまう。
妹ミーシャを選んだのは、単にハンニバルのほうが体力がまだあり、もうしばらく生かせることが出来そうだったからに他ならない。
ショックのあまり言葉を発しなくなったハンニバル
ハンニバルはグルータスとコルナスが斧と鉢を持ち、ミーシャに歌を聞かせながら外に連れ出すのを見て、本能的にミーシャの運命を悟ったが、子供のハンニバルにそれを止める手立てはなかった。
ミーシャ殺害の瞬間は、ハンニバルは気を失っていたため見ていないが、心に与えたショックは大きく、その後数年間、ハンニバルからしゃべる能力を奪ってしまった。
また、ミーシャが殺害されてから、ソ連軍に保護されるまでの記憶も一時的に失ってしまった。
記憶していないのではなく、ハンニバルの精神がその記憶を封印してしまったのである。
その記憶の封印を解いたのは、ハンニバルが医学生となった18歳になってからであり、ポピール警視が囚人に対して使う薬物のおかげであった。
薬物の助けを借り、狩猟ロッジでの最後の記憶を呼び戻したハンニバルは、ようやく妹ミーシャの復讐のための手がかりを得ることが出来たのである。
それは再びリトアニアの狩猟ロッジ戻らねばならぬことを意味していた。