最初の対決に失敗した後、ハンニバルにはあまり時間が残されていなかった。
リトアニアで仲間のドートリッヒをハンニバルに殺された件で、グルータスはハンニバルの動静を探らせていたソ連大使館のイワノフの情報から叔母の紫夫人を拉致し、ハンニバルをおびき寄せる行動に出たのである。
紫夫人を解放し、グルータスを捕らえる
コルナスからグルータスの居場所を聞き出していたハンニバルは、紫夫人の解放と妹ミーシャの復讐のため、先手を打ってグルータスの潜伏先であるロワン運河のハウスボートに向かった。
水位調節のため閘門で停止せざるを得ないタイミングを狙いハウスボートに乗り移り、最初の対決の時の教訓から、まず部下のミューラーとグスマンを片付けた。残りは船長とグルータスのみである。
しかし、船室に踏み込んだとたん、潜んでいたグルータスにハンニバルは銃で撃たれてしまう。が、正宗の短刀が銃弾を逸らせ、一瞬気を失っただけで済んだのである。軽傷ですんだものの、両手足を縛られた紫夫人がグルータスの手にある状況は、ハンニバルにとって圧倒的に不利であった。窮地を救ったのはハンニバルの状況を正確に見て取った紫夫人の決死の演技であった。ハンニバルに致命傷を負わせたと思ったグルータスは、紫夫人の決死の演技により、ハンニバルの始末より先に紫夫人を陵辱する事にしたのである。
その刹那ハンニバルはグルータスの両足の膝腱(しつけん)を切断し自由を奪い、紫夫人を解放しようやく妹ミーシャの復讐を果たす時を迎えた。