ハンニバルについにグルータスを処刑する時が来た。
ハンニバルの身を案じた紫夫人は、必死にグルータスをポピール警視に引き渡すよう説得するが、ハンニバルにはそんな事を露ほども考えてもいなかった。
しかし、運の尽きたグルータスは意外な事実をハンニバルに告げることになる。
なんと狩猟ロッジで妹ミーシャを殺害し、食料にした際、一味の鍋男ことカツィス・ポーヴィックがハンニバルにもミーシャの肉を分け与えたと言うのだ。
グルータスは最後の言葉で、ハンニバル自身が決して認めない記憶を、紫夫人にも知らしめてしまったのだ。
到底受け入れることの出来ない事実に、ハンニバルは自制心を失い、グルータスの顔に正宗でミーシャの「M」を刻みつけ、最大の復讐相手を処刑したのだった。
紫夫人との別れ
紫夫人は、ハンニバルの心の闇に気づきながらも、何とかそこから救い出そうと努力してきたが、コルナスのみならず、グルータスをも処刑してしまったハンニバルに対し、ついに絶望してしまう。
ハンニバルはグルータス殺害の後、一連の殺人の容疑で収監されたが、面会に来た紫夫人はそこで、常人には必ずある「心」の欠如を敏感に感じとった。
紫夫人が見たものは、リトアニアから引き取られた心に傷を負った少年ハンニバルの成長した姿でなく、人の器を借りた何物、あえて言えば怪物を見出したのである。
紫夫人は、ハンニバルを愛し、幾度となく人の世界に連れ戻す努力をしてきたが、推し量ることの出来ない怪物を目の当たりにし、ついに自分の役目の終わりをさっとったのだった。
紫夫人はハンニバルの釈放前にフランスを去り、ついにハンニバルは冬の心を抱えたまま、己の欲望のままに一人生きる道を進むことになった。

